イタリア料理じゃない

もう何年も前のクリスマスの事。

当時、東京でイタリア語を習って

いた私は、他の生徒仲間と共に

先生からイタリア料理を教わった。


玉ねぎ、キノコ、鶏肉に生クリーム

を用意して、皆で一緒に作業をした。


簡単なレシピだったが美味しく、

我々は充分、出来栄えに満足した。


学習室として提供された、

生徒のひとりの事務所からは、

夜の東京タワーが輝く姿を拝め

られ、楽しい聖夜となった。


後に、イタリアのトスカーナ地方で

滞在した際、その時教わった一品を

ホストファミリーに話すと、

「それはイタリア料理ではない。」

と言われてしまった。


確かにトマトソースを使った料理は

イタリア料理の代表ではあるが、

かと言って、イタリア北部出身の先生

が教えてくれた生クリーム使用の料理

を全否定されるとは思わなかった。


イタリア人の間では、日本人からすると

考えられない程、他地方を否定するキライ

があるが、その時もその、キッパリとした

断定の仕方に(またか。)と感じた。


イタリアは一つの国になってからまだ歴史

が浅い、という事実の他に、北部の人達が

納める税金で南部の人々を支えているとい

う現状を高額納税者が嫌がって国をニ分割、

三分割しようという声があがるくらいだ。


国民が一致団結するのは、ワールドカップ

イタリア代表が試合に出場する時くらい

である。


そして期せずして、最近イタリアが三分割

される事になった。

国自体ではなく、コロナの感染拡大状況に

合わせてエリア別対策を取る為に、3つに

国を分けるというものである。


これまで分割を望んでいたミラノ市が、

このやり方に反対しているのは皮肉だ。

1番深刻な地域、といった印象を持た

れるのが嫌なのだろう。


でも、いまや“イタリア料理じゃない”

などと否定している事態ではなく、

ひとつの国として、見えない敵と闘う

ために、どの州も互いに協力し合わな

ければならない。


イタリアだけでなく、世界の国全部が

どこまで助け合えるか、大きな運命に

試されているのかもしれない。

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