歯医者テンマツ③ー格闘

歯医者通いで唯一いやされるのが

病院の窓から城のお堀が見える事。


7階や9階から眺めるそれは、天気の

良い日はキラキラと水面を輝かせて

いる。


今日はいよいよ金属をはずす日。

先生は、先日の説明時と同じセリフ

「歯が折れる可能性もありますが、

ご了承ください。」

を繰り返す。


「はい」という答え以外は彼は予期

していなかったのに違いない。


私は顔に笑顔を浮かべながら、

(というよりニヤニヤしながら)

「理解はできますけど、了承はでき

ません。」

「割れないようにお願いします。」

と言った。


そこから2つの機械で先生は私の

金属と格闘し、(金属という呼び方

でいいのか疑問)それでははずせず


「別の機械を持ってきますね。」

と席をはずした。


新たに用いられた機械は先ほどの

2つとは音が違う。低い唸りを発し

ていた。

金属ひとつはずすのに、まさに格闘

と呼べる時間が続く。


途中、先生が小さく

「はぁ〜」

てため息をついた時が、一番汗が

出た。

先生も大変だが、私は歯が折れる

のではと気が気でない。


3種類の機械を使って、ようやく

金属ははずれた。

歯も折れることなく。


「ありがとうございます!」

歯医者に対してあんなに誠意を

込めて頭を下げた事はない。


会計を済ませて時計を見上げる

と、処置室に入ってから1時間半

が経過していた。

お堀も暗くなりかかっている。


そしてここから治療の先生へと

作業はバトンタッチされる。


その日は意外と早く、2日後に

おとずれた。

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