ボォッとつけたままのテレビを
観ていたら、健康寿命を延ばす
ために何をすればよいか、
専門家と一緒に話を進めますと
いった番組が始まった。
日本人の平均寿命は男性が81才、
女性は87才だそうで、私の4人の
祖父母はこれを難なく越えて長生き
していたように記憶している。
それで油断していたのだが、両親は
平均寿命に届かず逝ってしまったし、
最期の数年は健康とは呼べなかった。
先日、関東に行く機会をもてたので
80歳を過ぎた叔母に会いに湘南を
訪れた。
老人ホームの一室でひとり暮らしを
しているのだが、身の回りの事など
できるので基本マンションあるいは
寮に暮らしているようなものである。
食事は好きな時だけ他の入居者と
食堂でとり、ひとりでいたいときは
自室でとる。
自室といっても無味乾燥な場所では
なく、叔母自身がかつての習い事で
沢山作った、木彫り、造花、陶器が
センスよく棚に並べられ、居心地の
良い空間と言える。
こちらとしても一軒家にポツンと
暮らしていた頃より心配は少ない。
今年の夏の台風が関東を直撃し、
被害を案じて私が電話した際、
大して怖い思いもせずにやり過ごせ
たと話す叔母の声が心なしか元気が
ないような気がした。
それもあって今回訪れたのだが、
なんのことはない、いつも通り
飄々と元気にしていた。
ランチに地元で有名な魚の美味しい
店を予約してもらった。
アラカルトでふたりで色々と頼み、
叔母は実によく食べていた。
気取らない広い店内は、さすが
人気店だけあって美食を堪能する
ファミリーやカップルでひしめき
あっていた。
12時に着いた我々は、コース料理の
ように絶妙なタイミングで運ばれて
くる料理の数々を楽しみ、気がつけ
ば2時間近く経っていた。
お腹いっぱいにもかかわらず、叔母に
勧められるままにデザートを注文し、
ふたりで１つずつ甘い物を食べる頃には
すっかり店内はすいていた。
店を出て、数分で浜辺に出れる環境。
前日の寒くて雨の降る天気から一変して
雲のない青空のもと、海辺を共に歩いた。
叔母は散歩すると腰が痛くなるそうで、
ほんの10分ほどの散策で海を離れた。
住む場所から海がほど近いのは羨ましい
かぎりだ。
気候も寒すぎず、暑くなりにくいと聞く。
叔母の歩き方は問題なく、さっさと歩を
進める。
お守りに持参していた杖も、一度も使う
事なくただ握りしめていた。
部屋に戻るとリビングのテーブルの上に
読みかけの小説が置いてあるのと壁には
最近かいた絵が飾られている事に気づく。
読書も絵も続けている。
まずはひと安心と、胸をなでおろすのと
同時に、健康の秘訣を目の当たりにした
日だった。
富士山が前方に見えるはずの場所
